第105回 時を超えた山のはげまし
先日、八ヶ岳連峰の主峰である赤岳に登ってまいりました。
雪が降り始め、いたるところが凍っている山道の中で、
硫黄岳から横岳を通って赤岳までを縦走したのでありますが、
美しい光景とは裏腹に、
山の厳しい表情に何度か身のすくむような思いをさせられました。
稜線の風は身をちぎるように厳しく、
思わず私は、山に向かって「ごめんなさい」と謝っていました。
大自然の中に身を置くと、自分はあまりにもちっぽけで無力な存在であると痛感し、
思わず謝ってしまったのであります。
何度も苦しい思いをしながらやっと赤岳の頂上に着いた私は、自分の無力さと、
それでもなおかつ私を受け入れてくれる山の度量の大きさに、心から感動しました。
美しい赤岳は、私に次のようなメッセージを残してくれました。
私は、はるか遠く海底から、少しずつ押し出され、現在のような山になりました。
一つ一つ時を重ねて、私たちはこのような高さに至ったのです。
あなたもたゆまず、一歩一歩努力を積み重ね、
私たちと同じように高きを目指す者として頑張るようにしなさい。
わたしはこのはげましに感動し、雲海の彼方に見える夕日と共に、
それぞれの山が協力し合い語り合って、成長する姿に、心から感謝をしました。